アメリカ、ジョシュアツリー国立公園40日間の旅_後編【アンバサダー 稲田千秋】

前回に引き続き、ジョシュアツリーの旅の様子をお送りします!

Hidden Valley Campgroundは広大な岩だらけの砂漠の高原です。街と比べると標高が少し高く、朝晩はぐっと冷え込みます。

でも日が昇ると一転、テントの中には居られないくらい暑くなります。

朝ごはんをみんなで食べたら、クライミングに行く組は準備をして出発、子守り組は子供達と一緒に「いってらっしゃ〜い」とお見送りです。

はじめのうち、子守り組とクライミング組とは半日交代でした。その間子守り組はハイキングやボルダリングなどで半日まったり過ごすこともありましたが、買い出しやシャワー、洗濯などに出掛けると、結構忙しくなりました。

40日のキャンプとなると、炊事、洗濯、お風呂をどうするかが問題になります。買い出しは、アメリカならWalmartが大体どこにでもあるし、コインランドリーが普及しているので洗濯も問題なし。一番の問題はお風呂でしょう。日本なら日帰り入浴施設が一般的ですが、アメリカにはスーパー銭湯も温泉もほとんどありません。

今回は、現地で知り合ったクライマーから情報をもらい、シャワーは、キャンプサイトから車で45分くらいの街の小さなフィットネスジムを利用しました。1回7ドルでタオルレンタル無料、スタッフも(強面でも)毎回みな親切でした。他のお客さんも子供に優しく接してくれ、雰囲気のいいジムでした。

だいたいいつも、海外遠征の際には現地での情報収集が重要です。出国前にインターネットなどで得られる情報だけでは不十分なことが多いです。地元の人や、現地で知り合ったクライマーなどと話をするなかで得られる生の情報は、最新だし有用です。

途中から友人のクライマーが1人合流し、大人が5人になってからは、2人がクライミング組、3人が子守り組となって1日単位で交代するようになりました。そうなると、子守り組でも、ロープを使ったクライミングが少しできるようになりました。

ということで、後半の20日ほどは、ほとんど毎日登り続ける感じでした。クライミング組も1日たっぷりあればハードに登ることが出来るので、やっと疲れも溜まってきて、「レスト(休養日)」が欲しくなってきました。

でも、ジョシュアツリー国立公園は広大で岩だらけ。魅力的なルートがたくさんあるのでレストするなんてもったいない!と、ついつい登ってしまいます。

本当はもっと街の観光やショッピングもしたかったのですが、毎度の遠征同様、そんな時間はほとんどとらず登っていました。

沢山の、様々なタイプのルートを登ることで、出産後の衰えた心と身体にも徐々に以前の感覚が戻ってきて、クライミングもどんどん楽しくなってきました。

印象に残ったルートのひとつが、ジョシュアツリー最終日に完登することができたこのルーフクラックです。天井に走ったクラックを登っていき、最後は垂直の壁に乗り移ります。最後のトライでは余裕を持って登ることができ、産前の感覚がほぼ完全に戻った気がしました。

また、ジョシュアツリーで最も有名な”Equinox”というルートにも行きました。残念ながら、すでに本気トライをするには暑すぎる気候となってしまっていましたが、このルートのためだけにもう一度ここへ来たい、と強く思いました。

そんなわけで、0歳児を連れてのアメリカの砂漠40日キャンプ生活は、大きな問題もなく、楽しく過ごすことが出来ました。

岩登りだけでなく、日常生活そのものを、現地の風土に溶け込みながら楽しむことが出来ました。

次はみんなでどこへ行こうか?楽しい遠征の計画が止まりません!

稲田 千秋

稲田 千秋(いなだ・ちあき)形成外科医、クライマー。学生時代から登山、クライミングに熱中し、季節やジャンルを問わず様々なスタイルでフィールドアクティビティに興じる。現在はフリーランスで世界中を旅しながらクライミングを楽しむ傍ら、国際認定山岳医として、日本の山岳医療発展のため活動する。2016年 Yosemite国立公園 El Capitan "The Nose"完登。2019年 ペルーアンデス Alpamayo "French Direct"登攀など。

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