夏山といえば縦走!ということで今回は北アルプスでも知る人ぞ知る爺ヶ岳〜針ノ木岳の縦走ルートでフィールドテストを敢行。大型リュックサックにテント泊装備を詰め込んで、剣岳や鹿島槍ヶ岳などの迫力ある山々を望みながら尾根歩きを楽しめる2泊3日のコースを歩きました。DAY2では、ハイライトとなる尾根歩きの様子をお届けします!
爺ヶ岳〜針ノ木縦走(DAY1)はこちら
明け方は小雨。しっとりと濡れたテントをパッキングしてスタートです。予報ではお昼前には晴れ間が見えるはず。木々のトンネルをくぐっていくように、登山道を歩いていきます。
眺望はありませんが、尾根が霧の先につづいているのが見えました。あいにくの天候ではありますが、昨日の暑さを思うと、このくらいの涼しさの方が歩きやすくていいかもしれません。
種池山荘から進んだ先にあるお花畑。黄色、白、青など色とりどりの高山植物が見頃。この縦走路を歩かずに、爺ヶ岳登山や種池山荘までの方でも、ここまで足をのばしてみるのもよさそう。
登山道から斜面を見下ろします。お花はもちろん、谷間の残雪や昨日歩いてきた登山道も見渡せました。
雨とはいえ気温は18℃ほどあり、行動していると汗ばんでくるほど。ときおり現れる残雪がクールダウンしてくれます。
尾根に沿ってつづいている緩やかな登山道。雲は富山側から流れてきますが、だんだんと薄くなってきたようです。
ウェアの調整はとっても大切。冷たい風が吹き付けているので、インナーが濡れてしまうと低体温症になってしまうことも。発汗性の高いインナーにウインドシェルや薄手のレインジャケットを合わせます。
実は、ガスっていたこともあり歩きながら雷鳥を探していました。でも出会ったのはニホンザルの大群…。近年は標高の高いところまで出現するようで、雷鳥を食べてしまうのだとか。
富山側の尾根道は強風! ガスで周囲が見渡せないぶん冒険感いっぱいです。でもだんだんと明るくなり、雲の切れ目には山々の頂が顔を覗かせはじめました。
そしてついに一つ目のピーク、岩小屋沢岳に登頂! ガスの先には剣岳、立山の山々がずらり。
途中、新越山荘で休憩。水の補給はもちろん、ぜんざいや軽食などもいただけるまさにオアシス。長い縦走路の途中に山小屋があるのは助かります。
とはいえ、まだまだ今日のルートの序盤。次のピークへと向けて歩いていきます。高山植物が足元を彩ってくれるのもここまで。
この尾根歩きルート、針ノ木岳の方に向かうにつれて岩場や急登などのダイナミックなシーンが増えていきます。手を使って登る「スクランブリング」も多く、危険箇所ではしっかりと安全を確かめながら登ります。
つづいて鳴沢岳も登頂! アップダウンはありますが、尾根の上に並ぶピークをいくつもハントできるルートはこのルートの魅力です。
歩いてきた尾根も見渡せるようになりました。相変わらず風は強いですが日差しがあるので涼しく、まさに夏山満喫!という感じ。
立山方面は雪がたっぷり。周囲の山々を見ながら歩いていきます。
右手には赤沢岳、そしてその先の左手にはスバリ岳と針ノ木岳が見えます。もうお腹いっぱいですが、行程では半分ほど。
ガレ場が多くなってきました。ガスっていれば雷鳥ポイントですが、すっかり青空! リュックの重さと疲れもあるので、足元には要注意。
そして赤沢岳も登頂! 富山側を見下ろすと黒部ダムと室堂へとつづくロープウェイを発見。扇沢から室堂へとつづく、黒部アルペンルートはこの山々の下を貫いているのです。
針ノ木岳方面を見渡します。夏山らしい青空とずっとつづく稜線、尾根道。
「雷鳥いないかな〜」と岩場を探しますが姿は見えず。
スバリ岳が目の前に立ちはだかります。険しいアルプスの様相、気を引き締めて登って行きましょう。
スバリ岳への登りの直下、ガレ場で休憩していたらコマクサを発見! 可憐な花を咲かせていますが、乾燥しやすい砂れきでも水を得るために根っこの長さは地中1mにも及ぶのだそう。
登りの途中、振り返ります。一番右が昨晩登頂した爺ヶ岳、その少し右の奥には鹿島槍が見えます。
赤沢岳からつづく尾根道
後半は登っては降っての繰り返し。しかもガレ場が多く、テント泊装備を背負っていることもあり疲労困ぱい。やっとのことでスバリ岳に登頂! 残すは針ノ木岳のみ。
しかし、ここからが長いこと! スバリ岳を下り、ふたたび針ノ木岳への登りが待ち受けています。
ルートが不明瞭なところがあったり、大きな岩場があったりと難所がつづきます。登山道の一部が崩落しており、岩につけられたマークを頼りに進みます。
ラスト、針ノ木岳に登頂! これにて本日のピークハントは完了。無事、5つのピークを踏破できました。影がだいぶ伸びてきました。日没までに針ノ木小屋にたどり着けるでしょうか?!
針ノ木岳のテント場に向けて下山開始。薄暗くなり、雷鳥が出てこないか最後の望みを胸に姿を探します。
すると日没間近、岩陰に雷鳥の姿が…! しかも5羽の雛を連れていました。親鳥は見晴らしのいい岩の上で警戒中。疲れ果てた登山隊にひとときの癒しを与えてくれました。
本日の宿泊は針ノ木小屋のテント場で。風通しのいい場所ですが、それほど荒れることなく、空は快晴。月が明るく照らしてくれました。
月明かりで、今日歩いてきた尾根を振り返ります。「こんなに長い距離を歩いてきたのか…」と、一同充実感に浸ります。翌朝まで天気が持つでしょうか。晴れれば下山前に蓮華岳を踏んで、朝焼けを拝みたいところ。好天を祈って、各自テントへと戻りました。
〈山行2日目を振り返って〉
いくつものピークハントを繰り返す、贅沢なDAY2。天気さえよければ、これ以上ないくらいの眺望を楽しめます。今回も歩いている稜線はもちろん、周囲の山々を存分に堪能できました。ガスがかかっているときでも幻想的な雰囲気を味わえ、アルプスならではの厳しさも感じられました。種池山荘、新越山荘、針ノ木小屋と、小屋が充実しているので休憩や水の補給も安心なのも嬉しいポイント。小屋が営業していないシーズンは、多めに水を担がなければならないこともあり、やはり夏季がオススメです。
尾根歩きとはいえ、そこそこの距離がある2日目。種池山荘→岩小屋沢岳→(2:30)→新越山荘→(1:00)→鳴沢岳→(1:00)→赤沢岳→(1:45)→スバリ岳→(1:00)→針ノ木岳→(0:30)→針ノ木小屋と、山と高原地図のコースタイムでも7時間45分もあるんです。テント泊装備の場合はプラス1〜2時間ほど余裕を見ておくと安心です
〈爺ケ岳〜針ノ木縦走(DAY2)で使用したアイテム〉
〈cougar grace 45-60〉
フロントポケットはマチ付きの大容量仕様となっていて、山行中に脱いだフリースやアウターも簡単に収めることができました。今回は天気に恵まれたのですが、レインウェアも収納し、携行していました。また、開口部が大きく開くので、荷物をさっと取り出せるのも便利な点。水抜き穴(ドレインホール)もあり、濡れたレインウェアの一次的な収納場所に最適でした。左右のサイドポケットも同じくマチ付きで拡張性が高くなっています。1日目のゴミや脱いだものなど、メインコンパートメントに入れたくないものを収納していました。
〈beaufort 3L jkt (unisex)〉
2日目の朝はガスに覆われていて、風も冷たかったため着用しました。カリマーいち軽量のレインウェアですが、50,000mmの高い透湿性を備えているため、稜線に出てからもベタつかず、快適な着心地でした。付属のスタッフバッグに収めるととてもコンパクトで、ワンドポケットにもすっぽりと入るサイズ。雨天用に持っていたアイテムですが、風が強い時や直射日光に肌を晒したくない時にも「持っていてよかった」と思える万能ジャケットでした。
〈UV neck gaiter〉
長めに作られているので、ゲーター使用時もしっかりと首を日差しから守ってくれました。稜線を歩いていると、額から滝のように汗が…。ヘアバンドとして使用すれば、前髪を押さえてくれ、吸水速乾素材なので汗もすぐ乾きました。
〈strata 50 type2〉
2日目はガレ場などの岩稜歩きも多く長時間の山行でしたが、軽量かつ高強度生地を使用した〈strata 50 type2〉は堅牢性も高く、長時間、激しく岩肌との擦れや、引っ掻きを繰り返しても破れたり、穴が開いたりすることはなく、安心感がありました。この日は早朝から夜にかけて長時間稜線歩きをしましたが、トレッキングポールホルダーのおかげで上り下りもポールの出し入れが億劫になることはなく、快適でした。
〈vector W’s hoodie〉
撥水、防風機能があるので、急な天候変化でも暑さや寒さ、ムレを素早くフラットにしてくれました。今回の山行では風・霧・日差しも全てのシーンを体感したのですが、ほぼ常時、vector hoodieを着用していました。夏の山行には1枚持っていると役に立つアイテムです。UV機能はありませんが、やはり1枚あるかないかで日焼けの具合も違う気がします。