南緯32度、日本との時差12時間。日本列島の裏側、地球儀をぐるりと半周回した場所、世界最長8,000kmアンデス山脈の旅へ。日本の地平線の下、南半球の星空(宇宙)を眺めながら、南米大陸最高峰アコンカグア峰(6,960m)山頂を目指します。
南米大陸最高峰・アコンカグア峰(6,960m)登山 vol.1は こちら
「今日はどうかな?」は、アングラーでしたら「今日は釣れるかな?」の意味。天体観測屋の場合は、「今晩は晴れるかな?」になります。天候が不安定な山岳地帯の場合、午前中が晴天でも、午後になると雲が湧き始め、気温の下がる夜間になると曇天というパターンということがよくあります。がっかりしないためにも、その期待も半分の半分程度に留めておきますが、晴れて欲しい思いは倍の倍です。
しかし、星空観望は快晴でなくても十分楽しめます。これから目指す頂を眺めながらの星空散歩は、夜が明けるまで素敵な時間を過ごすことが出来ます。
「あれが、天の南極!」。地球の自転軸が南半球側の天球(星空)と交わる点のことを言います。北半球側の「天の北極」付近には、目印となる北極星が輝いていますが、「天の南極」には明るい星がないため、星図を使って正確な位置を探します。天の南極を目指して南へ進み、それが頭上(天頂)に見える場所まで到達できたら、そこは世界中の冒険家が憧れる南極大陸の南極点です。「天の南極」と、南極大陸の「南極点」の位置が天空上で初めて確認できて、静かなキャンプ地でひとり感動します。
「南十字星」、「ηカリーナ星雲」ともにキリマンジャロ峰登山以来、6年ぶりの再会です。ηカリーナ星雲の距離は、およそ一万光年。一万年前に放たれた光が、アンデス山脈に今晩届きました。南米大陸の遺跡で最古のものは、一万数千年ほど前。「ηカリーナ星雲」の一万年前の淡い光を眺めつつ、人類発祥の地であるアフリカ大陸での登山を思い出しながら、人類がこの南米大陸まで移動してきた壮大なドラマを想像します。
エル・プロモ峰を前景に、土星と木星が鈍く輝いています。「次回の海外遠征では、携行可能な小型天体望遠鏡をキャンプ地まで運び上げて、世界中から集まった登山隊の皆さんに星空観望会を開催しよう!」。アコンカグア峰すら、まだ見ていませんが次の海外遠征プランまで考えてしまいます。
北半球の星座「オリオン座」を南半球から眺めると、逆さまに見えます。近所を散歩するように見慣れているはずの風景(星空)が、全て逆さま。夜空が初めて訪れた旅先の風景のようです。見上げても星座として星々を結ぶことが出来ず、近所を歩いているはずなのに迷子になるような感覚です。
博物館で星座を解説するプラネタリウム解説員として、妙な汗(冷や汗)を流しながら時間だけが過ぎていきました。