2013年5〜6月、北米大陸最高峰デナリ峰遠征に向けて日本を出国。しかし現地に到着してみると、なんと入山できないことが判明…。これも何かの運命と気持ちを切り替え、6,000m峰登山に対応できる装備もあるので、より冒険度の高いマーカス・ベーカー峰(4,016m)に挑戦することに。
偵察隊がC1に戻った翌日から、悪天候が3日間続きました。C1は氷河上に設営されているため、強風でテントごと飛ばされないよう、ロープの張りを時々チェックします。少しでもテントを開けると、強風で雪が入り込んでしまいシュラフを濡らします。
強風の音だけでなく、不気味な雪崩の爆音も時々聞こえてきます。この時期のアラスカは、真夜中でも暗くなりません。目が覚めてもキッチンテントに行って、お湯を沸かしながらガソリンバーナーの音を聞いていると、天候が悪くても幸せな気持ちになります。
吹雪が続き、身動きが全く取れません。そんな時は、キッチンテントで山話や食事作りで盛り上がります。悪い状況でも楽しい時間と空間に、自分たちで切り替えられるメンバーは、とても素敵です。限られた食料にも、遊び心としてハチミツも運び上げ、メンバー全員でホットケーキを作って停滞日を過ごします。
連日続く吹雪も時々止んで、日が差す時があります。氷河周辺の風景だけでなく、すごいスピードで吹き飛ばされていく雪雲や流れていくその影が美しく、とても感動的です。その風景が不気味で不安に感じるか、美しく感じるかは、眺めている人の気持ちしだいです。スノースコップとノコギリで、眺めたい方向に即席の特等席を作って、コーヒーを飲みながら風景を楽しみます。
強風は止みませんが、日が差した瞬間を狙って、テントから出て、雪で埋もれかけているテントを掘り出します。除雪作業しながら、辺りの風景を眺めていると、デナリ峰だけでなく、マーカス・べーカー峰も山頂まで行くことはできませんでしたが、ここに来られて良かったと改めて感じます。